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重さを必要としない引力

雪が降った。11月に雪が降るというのは、都内では54年ぶりのことらしい。

 

私の生まれ育った街は、滅多に雪が降らない地域で、雪が降った日に学校に遅刻しても「しょうがないよね」で済まされていたような場所だ。交通機関が破綻するという理由ではない。誰もが珍しい雪を愛でてしまって、まともに登校できないからだ。冬期のコートの着用に申請が必要な街だった。

地元を離れるまで、雪が積もるのは雪国でしか起きないことだと思っていたし、年内に雪が降るなんてことは、雪と共に生きている人達の日常以外にありえないと思っていたのだ。

 

それが、今日、年末の気配もしない11月に雪が降った。

 

はらはらと舞い散る雪を見ていると、まるで自分が浮いていくような感覚に襲われる。空から降ってくるものの速度を覆して降る雪はただただ綺麗で経験則で培った感覚を奪ってしまう。

見ているだけで、自分の身体の感覚さえ奪われる。けれど目を背けることができない。目が離せないのは、物珍しいせいだからだろうか。圧倒的な引力からどうしても逃れられない。

そういうものは、きっと雪だけではないのだろう。圧倒的な引力に惹き付けられながら、私は今日も生きている。