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あなたは物語性を纏った記号になれる。

真夜中の水中遊泳

秋の朝は肌寒くて、頭を少し冴えさせてくれる。どの季節だって早朝が好きだ。早起きした日でも夜更かしした日でも。
真夜中、きっとほとんどの人が眠っている時間、その時間に労働をしていた時期があった。その場所は東京タワーのそばの9階建てのビルの最上階で、なぜか他の階は普通なのにそのフロアだけが全面ガラス張りだった
今日みたいな台風の日は、そのフロアで見た台風明けの夜明けを思い出す。
夜が更ける頃は暴風雨でガラスを叩き付ける雨粒に囲まれて、水中にいるみたいだった。
台風が去って夜が明ける時、空気全体は藍色のまま光の筋が雲間から現れて、絵画みたいだなと思ったのを覚えている。

みんなが眠っている時間。一部の人しか出逢えない美しい光景。

出逢うことは当然ながら個別の体験なのだから、特定の誰かしか体験できない出来事だ。けれどそれを時間で括ってしまえばその希少性は更に増してゆく。希少というだけで少し特別な色気を帯びる気がする。そうやって日々の出来事を彩る。それはとても楽しい遊びだ。