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狐の嫁入り

朝、天気雨が降った。
晴れているのに雨が降る。狐の嫁入りだ。

なんとなく、狐の嫁入りは秋だと思っている。恐らく秋が一番似合うからだ。

狐の嫁入り」という言葉で立ち上るイメージはいつも同じ。
江戸か室町か、文化的に成熟しているだろう時代、少し身分のいい大名あたりに化けた狐が白無垢を着て嫁いで行く。その行列の様子。
そして恐らく季節は秋。そう、今日みたいな。

この時期の空気は金木犀の香に満ちていて、歩いているだけで幸せな気分になる。狐ならばこの季節を狙うのでしょう。
甘ったるいのにどこか気品を残した香が充満するなか、秋晴れの陽射しが雨粒に反射して黄金色に輝く。美しすぎて嘘くさくて狐につままれたかと思う。だから、きっと秋なのだ。
桃源郷は恐らく春。色も淡い桃色、そんな極楽浄土。満ちる香も春らしいあの甘い香。
一方で黄金色の世界は蜃気楼に近い極楽。甘ったるいのにどこか切ない金木犀の香が似合う。そして、化かされている感覚がとても合う。

狐が似合うのは秋。狐というよりお稲荷様だろうか。お稲荷様は秋が似合う。鳥居が朱色なのも関係しているのだろう。

朱色が似合うのは秋でしょう?
かつて高貴だとされた紫や、日本独自と言われる藍色よりも、朱色にこの国の色を感じてしまう。それは鳥居の色だからなのかしら。

朱色、でなくとも例えば藍色のような、一般的な色の名前で呼んでしまうことだって可能なのに固有の名前を持った色。私はそれらにとても経緯を払う。日本では虹が7色であることを誇りに思う。

大切なのは、結果でも実績でもなくて、そこに降る雨の色だ。