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あなたは物語性を纏った記号になれる。

重さを必要としない引力

雪が降った。11月に雪が降るというのは、都内では54年ぶりのことらしい。 私の生まれ育った街は、滅多に雪が降らない地域で、雪が降った日に学校に遅刻しても「しょうがないよね」で済まされていたような場所だ。交通機関が破綻するという理由ではない。誰も…

露ができはじめるころ

白露、という言葉を知ったのは最近のことだ。1年を24等分してその分割点に当たる日の名称、二十四節気のひとつらしい。立春や夏至をもっと細分化したもののようだ。春夏秋冬をさらに6つに分けた24の季節。「にじゅうしせっき」という響きが綺麗だ。 立春、雨…

真夜中の水中遊泳

秋の朝は肌寒くて、頭を少し冴えさせてくれる。どの季節だって早朝が好きだ。早起きした日でも夜更かしした日でも。 真夜中、きっとほとんどの人が眠っている時間、その時間に労働をしていた時期があった。その場所は東京タワーのそばの9階建てのビルの最上…

狐の嫁入り

朝、天気雨が降った。 晴れているのに雨が降る。狐の嫁入りだ。 なんとなく、狐の嫁入りは秋だと思っている。恐らく秋が一番似合うからだ。 「狐の嫁入り」という言葉で立ち上るイメージはいつも同じ。 江戸か室町か、文化的に成熟しているだろう時代、少し…

無機質な感情

秋刀魚の季節。会社の近くの小料理屋さんで秋刀魚定食が始まる季節。 「旬のものを食べなきゃね」そんな科白とともに秋刀魚が口に運ばれていく。 旬のもの、季節のもの、その類いを耳にする時、それらを極端に避けていた時期のことを思い出す。 私の実家は港…

文字に起こして

「文字に起こして自分を起こそう」 とある人がそう綴っていたのを目にして、 このところの私は悪い水が溜まっているような淀み方をしていたなと気付いた。 外に出ない言葉が身体の中に留まって、どこへも行けずに薄らと汚れていく。そんな感覚が続いていた。…